健康診断の血液検査で「貧血」の項目をチェックする際、ほとんどの人が「ヘモグロビン(Hb)」の数値だけを見て一喜一憂しているのではないでしょうか。ヘモグロビン値が基準値内であれば「貧血ではない、大丈夫」と思ってしまうかもしれません。しかし、薄毛や原因不明の体調不良に悩んでいる場合、その判断は早計です。なぜなら、ヘモグロビン値が正常でも、体は深刻な鉄分不足に陥っている「潜在性鉄欠乏症」、通称「隠れ貧血」の可能性があるからです。これを明らかにする鍵が「フェリチン」という項目です。ヘモグロビンが、血液中を巡って酸素を運ぶ「現在使っている鉄」だとすれば、フェリチンは、肝臓や脾臓などに貯蔵されている「予備の鉄」、いわば「貯蔵鉄」です。私たちの体は、食事からの鉄分摂取が不足すると、まずこの貯蔵鉄であるフェリチンを取り崩してヘモグロビンを作り、なんとか正常値を保とうとします。つまり、ヘモグロビン値が下がり始める頃には、すでに体内の鉄の貯金は底をつきかけている危険な状態なのです。隠れ貧血の段階では、抜け毛や薄毛、疲れやすい、めまい、頭痛、気分の落ち込みといった、様々な不調が現れます。しかし、通常の健康診断ではフェリチンを測定する機会はほとんどありません。もし、原因不明の抜け毛と共にこれらの症状に心当たりがあるなら、内科や婦人科、あるいは皮膚科の医師に相談し、「フェリチン値も測ってほしい」とお願いしてみてください。あなたの長年の悩みの本当の原因が、そこで明らかになるかもしれません。