シャワーを浴びるたび、排水溝に溜まる髪の毛の量に恐怖を感じるようになりました。ドライヤーをかけると、床にはらはらと落ちる抜け毛。もともと髪が細く、量も多い方ではなかったけれど、明らかにここ数ヶ月で分け目が目立つようになってきたのです。まだ30代前半、どうして?ストレスだろうか、それとも遺伝?不安な気持ちで皮膚科のドアを叩きました。しかし、頭皮に異常は見られないとのこと。途方に暮れていた時、ふと自分の体調を振り返りました。そういえば最近、朝起きるのが異常に辛い。階段を上るとすぐに息が切れるし、なんだか集中力も続かない。もしかして、と思い内科を受診し、血液検査を受けたのです。結果を聞いて、私は驚きました。一般的な健康診断で測るヘモグロビンの数値は基準値内だったものの、体内の貯蔵鉄を示す「フェリチン」の値が極端に低かったのです。医師から告げられたのは「潜在性鉄欠乏症」、いわゆる「隠れ貧血」でした。私の抜け毛と体調不良は、この深刻な鉄分不足が原因だったのです。その日から、医師の指導のもとで鉄剤の服用と食生活の改善を始めました。レバーや赤身肉、ほうれん草や小松菜を意識して食べる日々。変化はすぐには現れませんでした。しかし3ヶ月が過ぎた頃、まず体調が劇的に改善しました。朝すっきりと起きられるようになり、疲れにくくなったのです。そして半年後、ふと鏡を見て気づきました。分け目の地肌が、以前ほど目立たなくなっている。産毛のような新しい髪が、力強く生えてきているのが分かりました。鉄分が、私の髪と体を取り戻してくれたのです。あの日の決断がなければ、私は今も一人で悩み続けていたでしょう。